私は山崎豊子さんのファンで原作の『白い巨塔(2003)』を読んでいたのですが、ドラマ版もものすごく面白いです。
大学病院での派閥に執念を燃やす一人の外科医の人生をリアルに描いているので、とても興味深い内容になっています。
主人公は外科医・財前五郎(唐沢寿明)。
教授(出世)になるための実績が必要となれば患者を選りすぐりし、自分に徳をもたらしてくれるとみればお金に糸目もつけず、一見血の通った人間なの?と疑いたくなるような冷酷な人物です。
「財前教授の総回診です」という一言で始まる回診シーンはまるで大名行列そのもので迫力満点で、ドラマの見どころです。
「どうして患者が医師に気を遣わなければいけないのか」と、視聴者はまずここで疑問を抱くと思います。
執念で教授になった五郎だったのですが、名誉を求めるがあまり視野が狭くなり、診断を誤り遂に医療ミスを起こしてしまいます。
五郎は癌専門医だったのですが、終盤では自らが末期癌で死亡するという皮肉な結末を迎えます。
ラストの2話あたりの急展開は、緊張感たっぷりで一秒たりとも画面の前から離れられませんよ。
同期の医師・里美(江口洋介)は五郎とは正反対の性格でいつも患者を最優先していました。
そんな里美とのやりあいも見どころでした。
なかなか里美とは医師として協力することはないのですが、里美の内科医としての腕は評価している財前。
母親に対しての気持ちもいつまでも真っ直ぐでした。
財前が癌と分かった時は気の毒なようにも思いましたが、因果応報というか彼に余り同情はしませんでした。
『白い巨塔(2003)』は、そんな生身の人間臭さを持った一人の外科医を興味深く描いたドラマなのです。
終始ストーリーや脚色に引き込まれ、放送当時は次の放送が待ち遠しくて仕方ありませんでした。
このドラマは「よくある医療ドラマ」というような安直なものではありません。
名作です。
個人的には井上由美子さんの脚本と唐沢寿明さんの演技が名作へと大きくけん引したと思います。
余りにも人気作品なので、最近では2019年版『白い巨塔』が放送されました。
どの財前五郎がよかったか?なんて話題になるのですが、私は俄然唐沢寿明推しです。
放送から18年も経っていますが、いつまでも風化しない作品ですよ。